
今回で10回目を迎える”キビるフェス2026”。
今年は2025年12月から2026年1月にかけて今年は総勢6つの団体の作品をご覧いただけます。
彩り豊かな6団体のことを是非もっといろんな方に知ってもらいたい!!ということでスタートしました\\キビるフェス2026 紹介コラム//!!
福岡にゆかりのあるアノ人やコノ人に、団体のあれこれ語って頂きました。
知らない人はもちろん知ってるよ~という方も!新たな魅力を発掘できるかも。
今回紹介コラムを書いていただいたのは、、、、
アーティストコレクティブ〈そめごころ〉劇作家・演出家の石田聖也さん。
石田さんは一見「静」な印象がある方ですが、体験型パフォーマンスツアーや野外劇、サウンド・インスタレーションの創作、さらに空き家をアトリエとして活用しながら、公演や展示、WS、トークイベントなどを企画するなど、とにかく幅広い活動を行っています。
あまり多くは語らないけれど、出てくる言葉や思考は核心をついている。頭の中では常に言葉や思考がぐるぐると動いている方なんだろうな、、と勝手に想像させてもらっています。
紹介していただく団体は『0の地点』。
今回の紹介コラムは0の地点第一回公演「魂の女優ごっこ展 永遠の役を生きる、私たち」ついて書いていただいています。
石田さんはこの公演に構成・演出として参加されていました。
素敵だった前公演を味わっていただきつつ、次回公演をお楽しみに。
公演を観た方も観てない方も、是非ご一読ください~。
早速どうぞ!!
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『女優という魂の居場所を探して』
0の地点の旗揚げ公演に構成・演出で入らせてもらったのが2022年なので、もう3年以上前になる。そのことにシンプルに驚く。あまり昔の創作の中身のことを思い出そうとすることはありませんが、こうしてコラム執筆の機会をいただいたので、試しに思い出してみようと思う。
とは言ったものの、最初にパッと思い浮かぶ記憶は結構たいしたことのない断片的なものばかりで。例えばそれは、峰尾家の二階で創作という名のお茶会ばかりをしていた風景、あるいは自宅でせっせと舞台美術で使うキャプションを大量生産し続けていた記憶。またある時は、SRギャラリーの楽屋のガラスをスキージで綺麗にすることに熱中していただけの記憶。といった感じで、意外と演劇のことよりその周辺のことばかりが頭に浮かんでくる。
ただ、この作品に関して言うならば、そのような個別の記憶、或いは主観的な歴史のようなものをそのまま作品としよう、というコンセプトであったのだから、案外人間の精神の働きはバカにできない。
「魂の女優ごっこ展 永遠の役を生きる、私たち」という作品は、SRギャラリーで開催される展示会を舞台にした演劇だった。展示会では、峰尾かおり/宗真樹子という二人の女優の没後50周年記念ということで、二人の過去の出演作品のチラシや台本、小道具や衣装、活動年表など様々な遺品が展示されていた。その他にも、彼女らの魂(幽霊)が演じる、過去の出演作品の断片的なパフォーマンス(抜粋)や朗読なども行われている。
そして、この劇の観客は舞台となる展示会の来場者であり、舞台セットであり、作品世界の一部として組み込まれている、というのがまあざっくりとした構造であった。
観客の中には彼女らとこれまで親交の深い人物が多数来場していて、当然だけれど、二人の女優は存命であり、没後50周年記念というのも真っ赤な嘘、フィクションであることは観客は百も承知している。なので最後に冒頭と同じようなシーンを用意して、ちょこっと台詞だけ変え、生誕50周年記念の生前葬としての展示会、というジョークのような?落ちで終わらせることとなった。
このような作品を創ろうと思ったのは、まだ何をやるかも決まっていないお茶会シーズンに、お二人のこれまでの話をざっくばらんに、脱力したまま聞いていて、ふと峰尾家の階段の壁に飾られた額縁に入った舞台写真を観て発想した。演出的にはSRギャラリーの空間を活かしたイベントにするための方法を考えていたのは確かだけど。自分としてはとにかくただ自然と、なるようになったという印象だった。
この頃の私は、演劇を目には見えないものを、人間を通して見つめる装置のようなものとして考えていた。それで物的なものではなく、個別具体的な人物の歴史や精神、魂などを持ち出して、そこに光が当たる、そこを感じるような演劇にしようとだけ思っていた。
今になって思えば、女優という魂の居場所は、劇場であれば十分で。彼女らの歴史は、彼女らが永遠の役を生きることのみで持続していくのである。
そして女優の魂は、劇場に行けば、いつだって現在進行形でそこにある。
石田聖也
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石田聖也/劇作家・演出家(Artist Collective Somegokoro)
2013年、福岡大学在学中に大学の仲間と演劇ユニットそめごころを旗揚げ。以降、ほとんどの作品で演出を務める。既成戯曲の立ち上げの他、自身の戯曲の上演も積極的に行う。学生運動を題材とした一人芝居「ノクターン」で第3回せんだい短編戯曲賞最終候補作品に選出、浅間山荘事件を題材とした戯曲「反復する、イクツカノ時間と、交わる、イクツモノ時間の中で、僕らにできる、イクツカノこと。」で九州戯曲賞最終候補作品へ選出、愛媛/東京/福岡の3都市ツアーを行う。その他、演劇と映像インスタレーションを掛け合わせたパフォーマンス「スクリーン」や、女優の魂の展示会を舞台とした演劇「魂の女優ごっこ展-永遠の役を生きる、わたしたち-」、公園で観客と移動しながら上演する野外劇「レミング 世界の涯てまで連れてって」(戯曲:寺山修司)、劇場内を野外に見立てた仮想野外劇「銀河鉄道の夜」(原作:宮沢賢治)、美術館でヘッドフォンを着用して回遊する体験型パフォーマンスツアー「THE FIRST CLASS」の共同演出、野外でカセットテープを使ったサウンド・インスタレーションの創作など、その活動は多岐に渡る。2022年から福岡市早良区飯場の空き家をアトリエとして活用しながら、公演や展示、WS、トークイベントなどを企画。日本・韓国・台湾で行う国際交流事業EATIの実行委員を務め、2024年には釜山で3カ国の俳優たちと自身の戯曲「原理的人間」の共同製作を実施。東アジアのポテンシャルの発見と世界への発信を目指した「Othello」プロジェクトではドラマトゥルクを務める。