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特定非営利活動法人アートマネージメントセンター福岡

AMCF MAGAZINE

vol.
749

◆キビる2026 紹介コラム  本田範隆 さん▷Mr.daydreamer

コラム

今回で10回目を迎える”キビるフェス2026”。

今年は2025年12月から2026年1月にかけて今年は総勢6つの団体の作品をご覧いただけます。

彩り豊かな6団体のことを是非もっといろんな方に知ってもらいたい!!ということでスタートしました\\キビるフェス2026 紹介コラム//!!

福岡ゆかりにゆかりのあるアノ人やコノ人に、団体のあれこれ語って頂きました。

知らない人はもちろん知ってるよ~という方も!新たな魅力を発掘できるかも。

お2人目は、、、

南市民センター及び塩原音楽・演劇練習場の管理運営をされている本田範隆さん。

塩原音楽・演劇練習場はキビるフェス4つの会場の一つということで、先日記者会見にも登壇いただきましたが『作品を創作すること』に対するリスペクトと愛情があふれた方だな、と改めて感じました。

そんな本田さんにご紹介いただくのはMr.daydreamer、通称デイドリ。

出会いは2016年。本田さんがみてきたデイドリのこれまでと今回の作品について、じっくりと語って頂いています。

早速、、、どうぞ~!!

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最初に代表の上野隆樹さんと出会ったのは、2016年の福岡県大学合同公演『喜劇ドラキュラ』でした。その時役者として参加していた大学一年生の上野さんは、打ち上げの場で翌年を見据えた意欲を漂わせていて、その姿が強く印象に残っています。

翌年には作・演出を担い、『弧影』という難しい題材の書き下ろしを合同公演として上演しました。政治的なテーマと愛憎劇を絡め、改めて振り返ると、すでに劇団のテーマである「現代悲劇を創作する」という姿勢が芽吹いていたのだと思います。

プロフィールを見直すと、この頃にはすでに「Mr.daydreamer(通称デイドリ)」を立ち上げていたとのこと。学生演劇祭での2年連続大賞、全国学生演劇祭での審査員賞など、精力的な活動で早くから頭角を現しました。コロナ禍にあっても毎年新作を発表し続ける粘り強さも、この劇団ならではです。

そんなデイドリを改めて間近で見たのは、私がひそかに「謎の演劇勉強会」と呼んでいた「MMSTheater(エムエムエスシアター)」でした。紀元前から20世紀までの演劇人を一人ずつ取り上げ、その仕事や意義を語り合う会。筑後の会場に足を運ぶと、すでに常連のような佇まいで上野さんがいて、難しい話も身近な話も、なぜか小難しく(笑)語っていました。

この勉強会では、終わるとそのまま飲み会に突入するのですが、デイドリのメンバーは「これから稽古します」と別室にこもってました。大声と足音を響かせ、主催者に「迷惑だぞー」とからかわれながらも稽古を続ける。そしてひと段落ついたあとに飲み会へ合流し、初めからいたかのような顔で杯を交わす。そのストイックさと親しみやすさの両方を垣間見て、「いい劇団だなぁ」と感じました。

興味を持って作品を探すと、過去の上演記録が惜しげもなくYouTubeに公開されていたので、いくつか拝見しました。昨年は『パイドン』を劇場で鑑賞。観客が自由に動き回って好きな場所から観劇できる形式や、美術館のキャプションのような仕掛け、さらに上演中の写真撮影まで許される開放的なスタイル。哲学者ソクラテスの思想という難解なテーマにさまざまなアプローチで切り込んだ作品は、観客の私たちにもさまざまなインスピレーションをもたらしてくれました。

「キビるフェス」の記者会見では上野さんの真剣な語り口に気押される場面もありましたが、劇団の紗羽さんとの軽妙なやり取りも見られました。作品としては硬派な題材に取り組む一方で、劇団内での柔軟なコミュニケーションが垣間見えるのも、デイドリの魅力のように感じられます。

 

今回上演される『ハムレットマシーン』も、簡単に理解できる作品ではないかもしれません。しかし「語り合える」作品にはなってくれるはずです。観客同士が感想を交換し、言葉を見つけ合う。そのきっかけを差し出してくれる、それこそが、デイドリが私たちに与えてくれる演劇体験なのだと思います。

 

南市民センター及び塩原音楽・演劇練習場 本田範隆

 

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南市民センター及び塩原音楽・演劇練習場(〒815-0032 福岡市南区塩原2丁目8-2)

https://minami-tk.jp/

地域の「教育」「文化」「地域コミュニティ活動」を
サポートする、快適で誰もが使いやすい複合施設です。

 

profile

Mr.daydreamer

“現代悲劇の創作”を目指し、福岡を拠点に活動している演劇ユニット。通称デイドリ。 俳優の身体性(身体言語としての特性)と、インタラクティブな映像表現の調和による空間芸術としての演劇創作を得意としている。 https://mrdaydreamer.site/next/